「私がいてもいなくても」の結末のネタバレです。
感想も載せてあります。
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「私がいてもいなくても」の結末のネタバレ
望んだものは手に入らない。
この一言が全てを表しています。
それでも、晶子の持っている「めげない」という長所が、この物語に救いというか良い読後感を与えてくれます。
もう少し詳しく話すと、晶子は母親に兄と違う育て方をされました。
兄は母の愛情をたっぷりと。
一方で、晶子はほぼもらえず。
そのため、自分の行う事に自身が持てず、自分はいてもいなくても良い存在だと思ってしまいます。
そこから、真希や日山と出会ったことで、少しだけ上向くんですよね。
しかし、晶子と真希は喧嘩をしてしまうのです。
もう最悪で二度と話すことも会うこともないだろうというくらいに。
それでも、晶子が仕事に復帰した時には、いの一番に喜びの声を上げたのです。
さらに、こうして少しだけ成長した晶子にやってくる別れの時。
別れの相手は、相手は日山。
唯一、自分と共感できる『感情』を持っていた彼との別れ。
それは、非常に辛いものでした。
そして、ラストのシーンに映る晶子とトマトと晶子の呟き。
このトマトのシーンをどのように捉えるかで、「私がいてもいなくても」の評価が変わるでしょう。
どうしてかという詳しい話の流れは、ぜひ本編を覗いて確かめてみてください。
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感想について
非常にもにょっとするようなも終わり方です。
でも、この終わり方が何故か私は共感できるんですよね。
それは、多分今まで私自身も望んでいたものが手に入らないことが多かったからかもしれません。
こぼれ落ちていった、気付かなかった。
そんなものばかりでした。
そして、今もそれは変わりありません。
だから、その時のことを思い出してしまって晶子に共感してしまうのだと思います。
晶子の「居場所が欲しい」という気持ちも共感できるんですよ。
社会に出たら、実は自分の代わりになる人って沢山いるじゃんって感じてしまいます。
仕事でも、私生活でも、どこでも。
自分の代わりになる人ってそこら中にいるんじゃないか、と疑心暗鬼になっちゃうんですよね。
だから、必死に仕事にしがみついたり、休日にSNSや友達と遊んで・・・というようにしがみついてしまいます。
今でこそ私はそんなことはありませんが、かつて大学時代やその後の状況は、まさに晶子と同じ居場所を探し続けた人間でした。
誰にでも愛想を良くしたり、自虐的だったり、と。
それでも、なんとかやって、なんとかなったので、きっと晶子も大丈夫でしょう。
彼女は「めげない」心を持っていますから。
そして、何より私よりも若いんですからねっ!
まとめ
ドラマ的な要素や、劇のような喜劇・悲劇はありません。
あるのは、どこかにあるような日常に溢れる不幸に近いような物語です。
二歩進んで三歩下がって、また半歩・・・というような感じでしょうか。
今、自分が不幸かもしれない、と苛まれている人に、手にとってみて欲しい作品です。
きっと、読んだ後には自分はおかしくない。
自分は普通なんだ、ということに気付かせてくれるでしょう。
同作者の別作品も紹介しています。古い作品の短編集ですが、「私がいてもいなくても」が気に入ったら気にいると思います。
⇒「バラ色の明日」あらすじとネタバレ!静かに心を軋ませる短編集へ
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