名づけそむ」のネタバレです。
感想も載せてあります。
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「名づけそむ」のネタバレ
名前をテーマにしたオムニバス形式の本作。
タイトルはname.1、2・・・と至ってシンプル。
「name.1」は坂野三津江。
文具売り場で自給830円のパート。
風呂なしトイレ共同アパートで一人暮らし。
変凡な主婦・・・ではなく、18年前に男に狂い、夫と9歳の娘を捨てたことがある。
ある日、職場で「お母さん」と声を掛けられる。
それは、娘だった。
もちろん昔は恨んでいたという娘だが、もうすぐ結婚するので、結婚式に出席してほしいという。
まさか娘と再会し、許される日がくるとは思わなかった、と浮かれる三津江。
生きていて良かった、と思った。
しかし、今度は別れた夫が訪ねてくる。
元夫は、娘を育てたのは自分だけ、お前に慰謝料を請求しなかったのは2度と関わりたくなかったからだ、と告げた。
父から三津江は結婚式に来ない、と聞かされた娘は、再び三津江の職場に訪ねてくる。
それでも式に出てほしい、と縋る娘。
娘の名前は「優花」。
三津江から子供への最初のプレゼント。
赤ちゃんの顔を見ていたら、花が咲いた時のような優しい気持ちになってつけた名前だ。
しかし、領収証を頼まれて三津江が書いた名前は、「優香」。
正直言うと再会するまであんたのこと忘れてた、と言って間違った名前の領収書を渡す三津江。
忘れるはずがない名前、間違えるはずがない名前。
娘はきっと2度と来ないだろうー。
「name.2」。
「私は一生、男の人に愛されることも、名前を呼んでもらえることもないんだろう。」
恋人いない暦=年齢の愛子、29歳。
駅のホームで、自殺未遂と間違えられたところを、上司の息子の男子高校生に見つかってしまう。
好きになった会社の先輩の彼女は、自分と同じ名前だったことにショックを受ける。
愛されることもないのに、愛子。
男子高校生は彼女を励ますのだが・・・?
このほか、偽名を名乗る女の子。
密かに恋心を抱いていた自分と似た名前の義理の父への訣別。
name10まで全てが「人の名前」と関係するストーリーが収められています。
詳しい内容は、単行本を覗いて確かめてみてください。
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感想
志村志保子という文学。
などという煽りがついていると、却って白けてしまうものなのですが、それでもこれは認めざるを得ません。
文学なんて言われるから、大量の文章で表現されているのかと、警戒してしまいましたが、それもありません。
あくまでも、漫画的表現で、名前にまつわるエピソードが展開されていきます。
親から与えられたものと言っても、由来はいろいろなだけあり、持つ意味も変わってきます。
それと同じように、心暖まる話もあれば、胸が締め付けられるような話もあります。
1話目の、間違えるはずのない名前をわざと間違える話だと、とっても心に突き刺さりました。
それまで娘の名前が出てこず、領収書を書いただけで、表情が曇り、去っていく娘。
見事な表現に唸ると共に、そうせざるを得なかった三津江の気持ちを考えると胸がいたくなります。
いずれのエピソードも、みんな平凡な名前だし、取り立てて強烈な出来事があるわけでもない。
それでも、深く長く心に残るのも文学的、と言う感じがしました。
まとめ
誰もが持つ、名前にまつわるエピソードを集めたオムニバス。
「名前?適当につけた」というグサッと来るものから、心暖まるものまで、10篇の文学的作品を楽しむことが出来ます。
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