戸籍上は死亡し、社会的に存在しないことになっている「ヒル」という人々。
ヒルは、他人の留守宅へ密かに侵入し、生活を続けている。
そんなヒル同士の抗争に巻き込まれた「天然のヒル」こと佐倉葉子。
全ての謎が明かされる怒涛の結末をネタバレしていきます。
「ヒル」結末のネタバレ
カラこと月沼と落ち合う予定だった葉子(通称:ハコ)。
しかし、そこに現れたのは月沼ではなく、ボーガンを持った男。
危うく放たれた矢に当たるところで、ハコは足を滑らせた。
気づけば、ボーガンを撃ってきた男は電話中。
気を失ったふりを続けて話を聞いていると、カラもまた襲撃を受けたことを知る。
カラは、ボーガンを二発撃たれたらしく、死んでいるかのように話す男。
ハコは男の目を盗み、ボーガンを手に男を脅迫。
カラに会わせろと告げるハコ。
そして、男とともにとあるマンションへとやって来た。
けれど、そこに月沼の姿はない。
情報を得るため、あえてハコはトイレへ行く。
この男には、自分で考える能力はない。
案の定、ハコがいなくなった途端、男は電話をかけ始めた。
カラを拉致している仲間へ指示を仰ぐためだ。
聞いていると、ハコを足止めしておけという指示。
その間に隣の部屋へと仲間が来るようだ。
とりあえずは、カラの身もこちらへやって来るということが分かった。
だが、そこでテトリスの名が出る。
テトリスは、ハコの本当の家族を殺そうとした相手だ。
またアイツか、と。
どちらにしても、大人しく罠にハマるつもりはない。
ハコは密かにマンションを出て行く。
すると、ハコの前にある男が現れる。
その男は、以前、カラの伝言を届けてくれた相手。
男は付いて来て欲しいと言う。
男について行ったハコは、そこで瀕死に倒れるナナシと出会う。
月沼から聞いていたが、ナナシ自身と会うのは初めて。
そして、そこで明かされていく真実。
月沼の母親代りとも言える、マザーを殺した「赤髪のヒル」。
その赤髪のヒルを見つけ出すため、月沼はヒル狩りをしていた。
けれど、そんな者は最初からおらず、その犯人はナナシだったのだ。
ナナシは、月沼へ歪んだ嫉妬心を向けていたという。
なぜ、あいつだけ愛されるのかと。
そのため、マザーを殺しておきながら、何食わぬ顔で月沼の味方でいたのだ。
けれど、そんなナナシも病にかかった。
不治の病ではないが、病院にかかれないヒルにとっては致命的。
最期に、ナナシのオモチャであったカラを壊したハコに会ってみたかったという。
ナナシの最期を見送ったハコは、急いでマンションへと戻る。
しかし、そのマンションでは予想外な局面を迎えていた。
ヒルを追っていた警察官・佐藤が、月沼を拉致した男たちを追って来ていたのだ。
そして、月沼を救出。
月沼を追おうとしていた男たちに、ハコは消火器で応戦。
優位に立ったかに思えたその時、ハコの前にテトリスが現れる。
こいつを逃してはいけない。
けれども、消火器で殴った男がハコを蹴り飛ばす。
倒され、頭を足で踏みつけられるハコ。
そこへ佐藤とともに月沼が現れる。
すると、カラこと月沼に異常な執着をするテトリスは、すぐさま月沼へ襲いかかった。
負傷し、思うように動けない月沼。
それを支えるハコ。
そして、月沼へとテトリスの痛恨の一撃が繰り出される。
だが、それをハコが絶妙のタイミングで阻み、月沼が反撃。
テトリスに1対1の体術を教えたのは月沼だ。
だからこそ、その次の攻撃が読めていた。
窮地に追い詰められたテトリスは部屋の中へと逃げ込む。
けれど、そこで逃げ場もなければ、反撃する気力さえハコの言葉に奪われる。
挙げ句の果てには、死のうとしたのも月沼に止められた。
そして、警察官の佐藤が部屋へと踏み込んだ時、そこには項垂れるテトリスの姿だけ。
その後、海の近くの民宿でバイトをしていたハコ。
そこへ、回復中の月沼が現れた。
ハコは、月沼へ向かって、一緒に元の普通の生活に戻ろうと誘う。
もし、その気があるのなら、一週間後に待っている、と。
「ヒル」結末を読んだ感想
シリーズ全5巻、とうとう完結です。
思えば、ありそうでなかった他人の留守宅に侵入して生活するという設定。
あまりにも普通に、我が家のごとく空き巣をする主人公。
とても斬新な内容の作品だな、と。
そして、読むとヒルたちのルールや技術が妙にリアルで。
ちょっと現実的な不安を感じてしまうほどでした。
もちろん、結末を迎えるまでの色々なエピソードにも人間ドラマがありました。
何かを失い、何かを得る。
当たり前のことが当たり前でなくなる。
人生を俯瞰するような達観した深い言葉。
読むほどに、色々と考えさせられました。
そして、次第にスピードアップしていく展開。
明かされる謎や真実。
最初は抜けていたハコちゃんも、次第に成長していきます。
最後の方など、とても頭が良く冷静な子に。
そして、月沼くんがとてもカッコよく感じてくる。
最初は危ない人のような感じがしました。
何せ、あの目つきと言動です。
最初にハコちゃんが逃げても仕方ないと言える雰囲気です。
そして迎えた結末の本当にラスト。
これは明確には描かれていません。
しかし、他の方も感想で述べているように、ハコちゃんの表情が物語っているのでは。
ただ、個人的にはそこで焦らす、と言うかボカすのか、と。
それでも、読んできた充実感からすれば、読了感はご馳走様でしたと言えるものでした。